「ルシアンレース資料館」でお勉強

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2018-07-09 00:00:00

先日、大阪にある「ルシアンレース資料館」にお邪魔しました。
「ルシアンレース資料館」は、新大阪駅から600mほどの所にある、ルシアン大阪店の中にあります。
「ルシアンには、素晴らしいレースの資料がある」と色々な方からお聞きしていたので、とても楽しみに伺いました。
そのコレクション内容は想像以上!
1400年頃以降のレースが約10万点所蔵されており、一定の室温・湿度に保たれた部屋で、大切に保管されています。
これらを、マテリアル事業部のデザイナー山下名奈江さんが、丁寧に説明してくださいました。
ルシアンのエンブロイダリーレースは、数々のヨーロッパのトップブランドで使用されている事は聞いていましたが、その優れたクリエイションの背景には、このような貴重な資料を間近で見られることがあるのですね。
「1894 HIVER」「1896 ETE」と背表紙にあるということは、この時代から、春コレクション、秋コレクションとレースの新作を発表していたということ。これにも驚きです!

産業革命による機械化が進むまで、ひとつひとつ手作りされていたレース。
その時代の、貴重な器具も並んでいました。
これは、1900年代製のボビンレース製作用器具。
ボビンレースは、1520年代にヨーロッパで開発されたレースで、複数本のボビンに巻かれた糸を、美しい模様に編み上げるもので、その技術はリバーレースの原型と言われています。
この器具を見ると、それがよくわかりますよね。
小さくて手間のかからない物だと、これを膝の上にのせて一人で製作していたけれど、大きな物だと、3〜4人のベテランチームが10カ月以上かけて製作することもあったとありました。

これは、同じく1900年代製のニードルポイントレース製作用器具。
1540年代に開発されたニードルポイントレースは、1本の針を使って、好みのデザインを作成するもので、こちらは、現在のエンブロイダリーレースの原型と言えます。
立体的な模様が表現できるうえ、ボビンレースよりも製作時間がかかるため、価格はボビンレースの培近かったそうです。

今では、リバーレースとエンブロダリーレースの違いはひと目でわかりますが、この資料館に飾られていた17世紀、18世紀のものはあまりに繊細で、ボビンレースとニードルポイントレースの違いがわからないほどでした。
これは、17世紀後半に製作されたニードルポイントレース。
ヴェルサイユ宮殿を建設したルイ14世の持ち物と言われているそうで、よく見ると、確かに王冠の文様があります。
このように、製作に手間のかかったレースは、当時、金と並ぶほど高価。
富と権力の象徴であり、着用できるのは王族が裕福な貴族のみ。
男らしさの象徴でもあったそうです。
そのため、当時の肖像画はレースを繊細に描くことが求められたとか。

これも17世紀後半のニードルポイントレース。
このように男性が競うように、レースを身につけたのですね。
こちらは18世紀前半のニードルポイントレース。
高価なレースは、服からはずして子孫の服へと、代々受け継がれたそうです。
これは、19世紀半ばに製作された、ニードルポイントレース。
山下さん曰く「当時の技術を集結して製作されたもの」なのだそう。
実物は、息をのむほどの美しさでした。
レースは、生産地域によって特性がありますが、それは「その技術と職人が、大切な財産として保護されてきた結果」と山下さん。
機械による効率化もグローバル化も時代の流れを考えると不可欠ではありますが、地域性のある職人さんの素晴らしい技術も残ってほしいな……と願ったのでした。