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最新ランジェリートレンド



今シーズン注目のピックアップ

武田尚子(ジャーナリスト)
パリの夏展「2024CURVE」にみるランジェリーの立ち位置
 

「パリ国際ランジェリー展」の夏版である「CURVE PARIS(カーヴ・パリ」展(主催者:MSN)が開催されました。コロナが落ち着いて久々に開かれた昨年に続くものですが、今年の「CURVE」展は異例ずくめでした。 パリ在住の磯部美保さんの現地レポートと写真を基に、今の世界のランジェリー動向の一端をお知らせします。

ファッション総合展の一部として開催

「CURVE PARIS」の入っている会場の入口




まず、通常は 6 月か 7 月に開催される夏展が、今年はオリンピックの影響もあって 9 月の中旬。そして会場は、主催者の主力展示会である「WHO’S NEXT(フーズネクスト)」と同じ会場建物に組み込まれ、ファッション総合展の一部として、製品「CURVE」と素材展「アンテルフィリエール」が 2 フロアで展開されたのです。つまり、ランジェリーを目的にした来場者だけではなく、ファッション関連の幅広いジャンルの来場者が狭いスペースを行き来するという人の流れで、館内の相乗効果はあったものの、専門的な展示会としては量質ともに乏しかったと言わざるを得ないでしょう。

ランジェリー関連の出展社の割合をみると、「CURVE」出展者 85 社(ランジェリー20 社、ビーチ・リゾートウエア 27 社、プレタポルテ 34 社、その他 4 社)。近年、セレクトブランドを集めて成長している「EXPOSED」出展者は 20 社(ランジェリー10 社、ビーチ・リゾートウエア 7 社、ラウンジウエア・ナイトウエア 2 社、プレタ 1 社)と、いつも以上にランジェリーの比率が低く、影が薄いものになっていたようです。
素材展「アンテルフェリエ―ル」の方は、出展者 105 社のうち、中国 48 社に 香港 3 社と、ほぼ半数の 51 社が中国勢で占められ、非常に中国色の濃いもの となっていました。次のシーズンのトレンドを提案するフォーラムだけは多く の人を集めて活気がありました。


色専門の情報会社 Coloro とパートナーを組んだ素材展のトレンドフォーラム

模索続けるアンバランスなランジェリー業界

では、どのようなブランドやメーカーが出展していたのでしょうか。こういう状況の中でも、注目すべきランジェリーの動き、さらに将来性や未来を感じさせる出展者はあったのでしょうか。

フランス製シルク生地を使い、ニューヨークでデザイン、
日本の秋田で縫製している「BASARA(バサラ)」
「シモーヌ・ペレ―ル」「オーバドゥ」「シャンテル」といったフランスの老舗ブランドは、ごく限定したかたちで EXPOSED に小さなブースを展開。しかも、それ以外のランジェリーの出展者は、そのほとんどが小規模な新規ブランドという状況でした。その中で、日本人デザイナーが活躍するブランドの出展があったことが注目されます。
一つは、「BASARA SILK(バサラ)」。ニューヨーク在住のデザイナー、なかやまきみこさんと、スタイリストの村上由祐さんプロデュースで 2016 年にスタートしたブランドで、フランス・ぺラン社のシルクを使っています。昨年、日本国内の拠点を葉山から工場を新設した秋田へと移し、生産体制を整えたことも今回の初出展につながっています。



民藝の思想をベースに、日常の美を表現した
「OVAL(オーバル)」
もう一つは、パリ在住の吉田あゆみさんによる「OVAL(オーバル)」で、日本の民藝運動から影響を受けた日常に使えるデザインをコンセプトに、コットンや麻などの天然素材、白や黒を基調とした美しいランジェリーを提案していました。

パリの主要百貨店、「ボンマルシェ」や「ギャラリー・ラファイエット」のランジェリー売場を見ても、なかなか新しい動きは見当たりません。
長年にわたってランジェリーのリーディングブランドであった「ラ・ペルラ」が撤退した後、それに代わる存在というのはなかなか見いだせず、とりあえずは他のブランドでカバーしているという印象が否めないのです。

「ギャラリー・ラファイエット」では相変わらず、「SKIMS(スキムズ)」が好調で、客層を広げているという話です。
ファッションにおけるランジェリーの位置がややいびつになって、ヨーロッパでさえ、その存在価値がややゆらいでいるような印象さえします。
新しい世代が何をのぞんでいるのか、また新しい世代にランジェリーの魅力をどう伝えるか、業界あげて取り組んでいくことを真剣に考えなくてはならない時機が来ているように感じました。



武田尚子(たけだ なおこ)
ジャーナリスト。
ボディファッション業界専門誌記者を経て、1988 年にフリーランスとして独立。
ファッション・ライフスタイルのトータルな視野の中で、インナーウエアの国内外の動向を見続けている。世界のインナーウエアトレンドの発信拠点「パリ国際ランジェリー展」の取材を 1987 年から始め、 年 2 回の定期的な海外取材は35年以上にも及ぶ。
2021 年 3 月、家で着るアパレル(ナイトウエア&ラウンジウエア)の変遷をたどった『もう一つの衣服、ホームウエア』(みすず書房)を発刊。



 
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