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最新ランジェリートレンド



今シーズン注目のピックアップ

武田尚子(ジャーナリスト)

来年の春夏コレクションを発表した
「2023 カーヴ・パリ(CURVE PARIS)展」

 
【写真】「CURVE PARIS」会場入り口 (撮影:磯部美保)
「パリ国際ランジェリー展」の夏版として、7 月初旬にパリで「カーヴ・パリ」展(主催者:MSN)が開かれました。リアル展示会としては 2019 年の「ユニー ク」展(主催者:ユーロヴェット)以来ですから久々の開催です。
今回は、パリ在住の磯部美保さんのレポートを基に、展示会全体の様子をお伝えします。

独立系ブランドのスイムウエア中心

会場内はいつもとかなり様子が違ったようです。 夏展は以前からランジェリーよりスイムウエアが主役でしたが、今回はそれに輪をかけてスイムウエアやリゾートウエアが中心で、しかも無名の小さなブランドばかりという印象だったようです。出展者は約 350 ブランドでその半数が新規出展(素材展は 200 社)と発表されていますが、大半が独立系の小さなブ ランドで占められていました。
いつも会場の前面で広いスペースをとっているワコールヨーロッパやシモーヌ・ペレ―ル、オーバドゥといった常連ブランドの顔ぶれも見られません。シャンテルもランジェリーはありませんでしたが、新しく発表された水着ブランド「シャンテル・パルプ」が注目を集めていました。これは同社でヒットを続けている“ソフトストレッチ”グループの、一つのサイズで多くのサイズに対応するという、ランジェリーのノウハウを活かしたものです。
【写真】製品トレンドフォーラムは、ハンドクラフトとテクスチャーの重要性に着目 (主催者提供)
大手ブランドがこぞって出展しなかったために、採算がとれず、メインイベントであるファッションショーも開催することができなかったそうです。
スイムウエアが中心でランジェリーの影が薄いのは、売場も同様です。ヴァカンス前の時季の百貨店の売場を見ると、スイムウエアの活況に対して、ランジェリーは控えめであまり新しい動きが見られません。いかにフランスやヨーロッパの人々がヴァカンス文化を大切にしているかのあらわれです。

視覚や触覚で伝える大切さ

会場を奥に進むと、製品、素材(アンテルフィリエール展)ともにトレンドフォーラムがしっかり設置され、ランジェリーの先のシーズンを見据える提案を来場者が熱心に見ていました。

【写真】フランス素材メーカーの映像が映し出された(撮影:磯部美保)
サスティナブルの考え方が浸透していく中で、デザイントレンドがシーズンごとにそう変化する時代ではありませんが、このように視覚や触覚を通して来場者に直接伝えること、そこから何かインスピレーションを得るということはやはり展示会には不可欠といえるでしょう。
今回は、ショーが開催できなかった代わりか、エスモードの学生のクリエイティブなランジェリー作品の展示、さらに3D編機の展示や映像の上映が行われていました。これは Bugis( ニ ッ ト ) 、 MaisonLeveque( 刺 し ゅ う ) 、 SophieHallette(レース)というフランス企業 3 社の技術と情熱が集結されたもので、フランスのランジェリーのノウハウが 7 分30 秒に凝縮されていたということです。

バランスよい共存共栄願う

次世代の若い人々がランジェリーに可能性を見出して起業するのは歓迎すべきことですし、独立系の小さなブランドが多くうごめいているのが今の世界的なランジェリー市場の実像ではありますが、それだけでは業界としては非常にいびつと言わざるを得ません。それぞれの役割や強みの上に立ち、大手も中小もバランスよく共存共栄するのが健全な姿ではないでしょうか。

【写真】ランジェリーのノウハウを活かしたスイムウエア
「シャンテル・パルプ」(撮影:磯部美保)
スイムウエアに関しては、もともとの日本との市場性と違いがあり、さらにコロナ禍を経て、その海外とのギャップがますます広がったような気がしますが、ランジェリーの変革のためには学ぶべきところも少なくありません。少なくとも、ランジェリーにもスイムウエアやリゾートウエアの楽しさ、ライフスタイル提案がもっとあってもいいような気がします。
大げさな言い方かもしれませんが、人々に生きる喜びや感動を与えるのがファッションの使命であることを再確認したいと思います。


武田尚子(たけだ なおこ)
ジャーナリスト。
ボディファッション業界専門誌記者を経て、1988 年にフリーランスとして独立。
ファッション・ライフスタイルのトータルな視野の中で、インナーウエアの国内外の動向を見続けている。世界のインナーウエアトレンドの発信拠点「パリ国際ランジェリー展」の取材を 1987 年から始め、 年 2 回の定期的な海外取材は35年以上にも及ぶ。
2021 年 3 月、家で着るアパレル(ナイトウエア&ラウンジウエア)の変遷をたどった『もう一つの衣服、ホームウエア』(みすず書房)を発刊。



 
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