一般社団法人日本ボディファッション協会 もっと知ってほしいランジェリーのこと

ユーロベット主催のインナーウエア素材展
「アンテルフィリエール上海2016」レポート
グローバルなネットワークを推進

武田尚子(フリーランス・ジャーナリスト)

街の中心地にある広々とした宮殿の様な展示会場
(上海展覧中心)。もともとは英国籍ユダヤ系富豪の私有の庭園だったところに、1950年代にソ連の援助を得て出来た建物

10月12・13の2日間、上海でインナーウエア素材の展示会「アンテルフィリエール上海」が開催されました。これは、1月「パリ国際ランジェリー展」、7月「モード・シティ」の主催者であるユーロベット社によるもので、既に上海は香港と並んで、同社のアジア戦略の要所として実績を重ねています。

パリやニューヨークとは異なり、製品メーカーは出展せず、素材に特化した展示会となっています。

建物内部は、ロシア風の豪華な装飾が施されている。ドーム下の大きな吹き抜けホールを中心に、2層の回廊がつながっている。

出展者数は、全体で約180社。宮殿のような大きな会場の中を回廊に沿って 進んでいくと、ファブリック、レース、刺しゅうレース、副資材から機械、OEM・ODMメーカーまで、分野ごとにブースが軒を連ねていました。

来場者数は未発表(10月末段階)ですが、上海は生産の現場(工場)に近いこともあって、世界各国からインナーウエアの製造業者が工場の人を伴って来場するケースが多いようです。

日本からの来場者も少なくなく、「パリにはなかなか出張できないが、ここなら来やすいし、産地直結の分かりやすい情報が得られるので、また来たい」といという声も聞かれました。

吹き抜けホール中央で賑わっていたのが、トレンドフォーラム。7月「モード・シティ」の水着・アクティブウェアのトレンドフォーラムの空間デザインを登用しているが、そこに並べられた素材サンプルは
もちろん今回の出展者からセレクトされたもの 
2018年春夏シーズンのトレンドテーマは、“BODY DESIRE(欲望)”“BDDY DELIGHT(喜び)”
“BODY RHYTHMS(リズム)”と明解

分野別アワードの表彰

同展のメインイベントといえるのは、初日午前中に発表されたアワードです。

フランスの高級素材メーカー(LES TISSAGES PERRIN)も出展

業界に貢献している優れた素材メーカーを分野別に表彰するもので、今回はアスレジャー(TAKEFAST TEXTILE LTD)、レース(SHANTOU NEW PARTNER TEXTILES CO LTD)、エンブロイダリー(LIBERTYTEX CO LTD)、シェイプウエア(PENN TEXTILE SOLUTIONS GMBH)、
ラウンジウエア(BEBECOTTON KNITTING CO.LTD)、さらにコンセプトパリ代表のお勧め(シルクジャガード生地で知られるフランスのメーカー、LES TISSAGES PERRIN)と、計6社が選ばれました。審査員には、フランス・ランジェリーブランドのデザイナーやトレンド企画会社のディレクターなどが名前を連ねています。

トレンドフォーラムで行われたフロアショーのテーマは“アスレジャー”。ボンディング、
レーザーカッティング、リサイクル素材、レースと、多彩な素材バリエーションのプロトタイプ

日本ともつながりが深いLIBERTYTEX(リバティテックス)。本社は台湾だが、上海に工場がある

中でも、日本のボディファッション業界となじみが深いのが、エンブロイダリーレースのLIBERTYTEX(リバティテックス)。1980年に台湾台南市で創立されたファミリーカンパニー(現社長で2代目)で、台湾と上海に自社工場があります。最近はレースを使った婦人服ブランドの専門店を台湾に2店オープンさせており、その新規事業が、高度化、複雑化(あるいはハンドクラフト化の方向も)するレースの加工に挑戦するための貴重な情報源になっているようです。

ホール中央の表彰台に設けられたアワード表彰式に、受賞者が勢ぞろい

「デザイン面も品質面も要求度の高い日本の製品メーカーに対応していくのは大きな励み」と、Bobby Chen社長(表彰式受賞者集合写真の右から3人目)は話していました。

日本の先進性に熱い視線

日本企業は、4社(うち1社、タケダレースは中国現地法人としての出展)が出展していました。

昨年に続き、2回目の出展となるセーレン(本社・福井市)は、中国での知名度を高めようと、出展ブースを昨年の2倍に拡大させ、既に日本国内では実績のある丸編フリーカットのプレゼンテーションに力を入れていました。

丸編フリーカットの先端技術を紹介していたセーレン

同社独自のデジタルプロダクションシステム「ヴィスコテックス」を軸に、コンプレッションウエア対応のパワー切り換えを異素材の縫製なしで実現した「ヴィスコマジック」、カーリング(端がめくれあがること)なしに切りっ放しのできるフィット性に富んだ丸編みのフリーカット素材「フレックスムーヴ」、パワーコントロールに加えてフロッキーなどの多彩な変化も可能な「レジスタック」と、機能性とデザイン性が融合した先進技術を紹介。

日本国内では、ボディファッションメーカー大手との製品設計段階からの取り組みによって開発を進めてきましたが、海外においても徐々に実績を積み重ねる考えとしています。

フリーカットや接着技術とは異なるところで、レーシーな魅力を現代的に生かしたヘム素材を強みとしているのが北陸エステアールです。同展の常連出展者らしく、ブースでは熱心な商談が進められていました。

同じくユーロベット主催による「アンテルフィリエール香港」が来年3月、香港で開催されます。こちらもインナーウエア向け素材に特化した展示会ですが、選ばれたクリエイティブな出展者による構成で、よりインターナショナルで提案性の高いものになりそうです。

  • レーシーなヘムを得意とする北陸エステアール

  • 帝人はクローズなブースを設置